夏の旅行の申込画面で「旅行保険に加入しますか?」と聞かれたとき、こう思ったことはないでしょうか。熱中症になったら、これで出るんだろうかと。
答えは「商品と契約の始期日による」です。歯切れが悪くて申し訳ないのですが、これが2026年8月時点の正確な答えです。というのも、熱中症の扱いは2025年から2026年にかけて各社で大きく動いている最中だからです。
そもそも、なぜ熱中症は「出なかった」のか
旅行保険の正式名称は「旅行傷害保険」。傷害保険です。
補償の対象は「急激かつ偶然な外来の事故」によるケガ。転倒、骨折、交通事故はここに入ります。一方で熱中症は伝統的に「疾病(病気)」として扱われてきました。だから対象外だった、というのが従来の整理です。
実際、東京海上日動はFAQで、始期日が2025年9月30日以前の契約について「『急激かつ偶然な外来の事故』による傷害の場合に保険金が支払われるため、原則補償されません」と説明しています。
それが、2025年から動き出した

損保ジャパン:2025年1月から「自動セット」に
損保ジャパンには「熱中症特約」があります。日射または熱射による身体の障害も支払対象に含める、という内容です。
これが2025年1月1日以降の保険始期契約から、「セット可能」から「自動セット」に変更されました。つまり、自分で選ばなくても付いてくる形になったということです。
旅行会社の商品:2026年4月から補償開始
東京海上日動が引受けている旅行会社の商品でも動きがありました。
- クラブツーリズム:2026年4月1日から熱中症補償を追加
- 阪急交通社:2026年4月から熱中症も補償開始
ツアーを申し込むときに一緒に案内される保険は、ここ数か月で中身が変わっている可能性がある、ということです。
au損保:熱中症補償特約はあるが、死亡保険金は対象外
au損保のスタンダード傷害保険には「熱中症補償特約」があり、日射・熱射による身体障害について後遺障害・入院一時金・入院・手術・通院の保険金が支払われます。
ただし死亡保険金は対象外と明記されています。「熱中症が補償される」と一口に言っても、どの保険金が出るかは商品ごとに違うということです。
ややこしいのは「補償されません」も同時に存在すること
ここが一番の落とし穴です。
補償化が進む一方で、いまも「熱中症は補償されません」と書かれている商品ページが存在します。損保ジャパンのネット契約向けの国内旅行総合保険のページがその例です。
同じ会社でも、商品ラインによって扱いが違う。つまり「◯◯損保なら熱中症OK」という覚え方はできないということです。
加入前に確認すべき3つのこと
1. 会社名ではなく「商品名」で見る
同じ保険会社でも、対面で入る商品とネット完結型で扱いが違うことがあります。パンフレットの表紙に書かれた商品名まで見てください。
2. 「契約始期日」を確認する
東京海上日動の例のように、始期日が基準日より前か後かで結論が変わります。年間契約や自動継続の保険に入っている場合、いま持っている証券が古い条件のままという可能性があります。
3. 「どの保険金が出るか」まで見る
au損保のように死亡保険金は対象外、というケースがあります。「熱中症が補償対象」という一行だけで判断せず、入院・通院・手術・死亡のどれが対象なのかを確認してください。
この3点は、いずれも重要事項説明書か約款を開かないと確認できません。商品紹介ページの見出しだけでは足りない、というのが今回いろいろ読んでみての実感です。
熱中症以外の「病気」はどうなのか
ここまで読んで、当然の疑問が出てくると思います。熱中症以外の病気はどうなの?と。
結論だけ先に書きます。
- 食中毒(O-157・ノロウイルスなど)は出ます。各社とも約款で「ケガ」の定義に「細菌性食中毒およびウイルス性食中毒を含みます」と書いています
- 風邪・発熱・インフルエンザ・胃腸炎は出ません。国内旅行保険には、海外旅行保険の「治療・救援費用」に相当する疾病治療の補償が存在しません
「旅先の海鮮で当たった」は出て、「旅先で子どもが熱を出した」は出ない。名前が似ているので海外旅行保険と同じだと思われがちですが、中身はかなり違います。
この夏、熱中症で受診することになったら
保険の話とは別に、実務として押さえておくと動きやすい導線があります。
- #8000(子ども医療電話相談・厚生労働省):47都道府県すべてで実施。ただし受付時間が県ごとに違います。北海道は19時〜翌朝8時、茨城県・静岡県は24時間365日。旅行先の受付時間を出発前に見ておくと安心です
- #7119(救急安心センター・総務省消防庁):全国41地域のみ。多くは概ね15歳以上が対象で、15歳未満は#8000へ案内されます
- 医療情報ネット(ナビイ)(厚生労働省):会員登録不要・無料。「休日夜間対応医療機関を急いで探す」機能があり、旅行先でも全国検索できます
そしてもうひとつ、これは保険よりお金に効く話なのですが——受診したときの領収書は絶対に捨てないでください。理由は次の記事に書きました。
もっと詳しく知りたい方へ
この記事は熱中症にしぼって書きました。旅行保険そのものを腰を据えて比較したい方向けに、note で有料記事(300円)をまとめています。
- 主要7社の保険料と補償を並べた比較(1泊2日262円から。ただし安い商品には穴があります)
- クレジットカード付帯保険を13枚調べた結果。「カードで足りる」は成立するのか
- 入院日額が出ないカード、フランチャイズ7日の罠、家族特約が海外にしか付かない件
- 子どもが旅行先で夜に発熱したとき、実際にいくら払うのか(診療報酬点数から算出)
- 子ども医療費の受給者証が県外で使えない問題と、領収書を捨ててはいけない理由
- 結局どうすればいいのか、の判断フロー
国内旅行保険は「子どもの風邪」では1円も出ない|7社+カード付帯13枚を調べてわかった、本当に必要な備え(note・300円)
無料部分だけでも、熱中症と食中毒の扱いのところは読めるようにしてあります。
まとめ
- 熱中症は従来「疾病」扱いで対象外だった
- 2025年1月に損保ジャパンが熱中症特約を自動セット化、2026年4月に旅行会社の商品も補償を追加
- ただしいまも「補償されません」と書かれた商品ページが同時に存在する過渡期
- 確認すべきは「会社名ではなく商品名」「契約始期日」「どの保険金が出るか」の3点
- 食中毒は出るが、風邪・発熱は出ない
数百円の保険なので「とりあえず入っておく」でもいいのですが、何が出て何が出ないかを知ったうえで入ると、いざというときに慌てずに済みます。この夏の旅行の役に立てばうれしいです。
※この記事は2026年8月時点で各保険会社の公式サイトおよび公的機関の公開資料をもとにまとめた情報提供です。筆者は保険募集人ではなく、特定の商品への加入を推奨するものではありません。補償内容は改定されます。実際の加入判断は必ず各商品の「重要事項説明書」と「約款」でご確認ください。
あわせて読みたい:旅行トラブルで損しないシリーズ
- 旅行のキャンセル料はいつから、いくら発生するのか
ツアー・宿・航空券は別ルール。子どもの発熱で減額されない理由。 - 旅行キャンセル保険は「子どもの風邪」で本当に出るのか(note・300円)
主要4商品を条件の細部まで比較。「通院の窓」の広さが決定的な差になります。 - 国内旅行保険は「子どもの風邪」では1円も出ない(note・300円)
7社+カード付帯13枚を比較。県外で子ども医療証が使えない件も。
あわせて読みたい
- ANAマイル減額キャンペーン完全解説【2026年最新・次回開催予想・どれだけお得か徹底解説】
通常より20〜55%少ないマイルで特典航空券が取れるANAの減額キャンペーン。トクたびマイルやANAにキュン!の仕組み、過去の実績、次回… - 白川郷は「何時に行くか」で満足度が変わる|混雑を避ける1日スケジュールとおすすめの時間帯
白川郷の混雑ピークは11〜14時。駐車場の運用とシャトルバスの時刻から逆算した、そのまま使える1日スケジュールと、人が写り込まない時間帯… - 【宮古島】ほぼ確実にウミガメに会えるビーチ5選|新城海岸だけじゃない遭遇スポット完全ガイド
宮古島で野生のウミガメに会うなら?遭遇率トップクラスの新城海岸をはじめ、シギラビーチ・博愛わいわいビーチ・吉野海岸・中の島ビーチなど、ほ…


