子どもが熱を出した。あるいは自分の体調が怪しい。
このとき最初に頭をよぎるのは「行けるだろうか」で、次に来るのが「今キャンセルしたら、いくら取られるんだろう」だと思います。
先に結論を書くと、国内のパックツアーなら20日前から取消料が発生します(日帰りは10日前)。そして多くの人が誤解しているのですが、子どもの発熱を理由にしても、この取消料は1円も減りません。
この記事では、キャンセル料のルールを「ツアー」「宿泊」「航空券」の3つに分けて整理します。
まず大前提:3つは別々のルールで動いている
ここを混同している人がとても多いので、最初に整理します。
| 予約の種類 | 適用されるルール |
|---|---|
| パックツアー(募集型企画旅行) | 標準旅行業約款(国が定めた統一ルール) |
| 宿泊のみ | 各施設のキャンセルポリシー(バラバラ) |
| 航空券のみ | 各社の運送約款・運賃規則(運賃種別で全然違う) |
「旅行のキャンセル料は◯日前から」という話が人によって食い違うのは、それぞれ違うものの話をしているからです。自分の予約がどれなのかを確認しないと、正しい答えにたどり着けません。
パックツアーの取消料(標準旅行業約款)
国内の募集型企画旅行の場合、取消料は国が定めた約款で段階が決まっています。

通常の旅行(宿泊を伴う)
| 解除の時期 | 取消料 |
|---|---|
| 21日前まで | 無料 |
| 20日前以降 | 旅行代金の20%以内 |
| 7日前以降 | 旅行代金の30%以内 |
| 前日 | 旅行代金の40%以内 |
| 当日 | 旅行代金の50%以内 |
| 旅行開始後・無連絡不参加 | 旅行代金の100%以内 |
日帰り旅行
| 解除の時期 | 取消料 |
|---|---|
| 11日前まで | 無料 |
| 10日前以降 | 旅行代金の20%以内 |
| 7日前以降 | 旅行代金の30%以内 |
| 前日 | 旅行代金の40%以内 |
| 当日 | 旅行代金の50%以内 |
日帰りだけ最初のラインが10日前になっているのがポイントです。日帰りバスツアーなどは、思っているより早く取消料の圏内に入ります。
なお、航空券を利用する旅行や貸切船舶の契約では別の規定が適用されることがあります。
家族4人・10万円のツアーだといくら?
- 20日前:20,000円
- 7日前:30,000円
- 前日:40,000円
- 当日:50,000円
- 無断で行かなかった:100,000円
「無連絡不参加は100%」というのは覚えておいたほうがいいです。行けないと分かった時点で連絡するだけで、当日でも50%に抑えられます。連絡しないことのペナルティが一番重い。
ここが本題:子どもの発熱は「無料解除事由」に入っていない
約款には、取消料を払わずに契約を解除できる場合が定められています(第16条)。そこに書かれているのは、おおむね次のようなケースです。
- 旅行会社側が契約内容を重要に変更したとき
- 旅行代金が増額されたとき
- 天災地変、運送・宿泊機関のサービス提供の中止、官公署の命令などにより、旅行の安全かつ円滑な実施が不可能になったとき(またはそのおそれが極めて大きいとき)
- 旅行会社が期日までに確定書面(最終日程表)を交付しなかったとき
- 旅行会社の責任で旅行の実施が不可能になったとき
お気づきでしょうか。
旅行者本人や家族の病気は、どこにも入っていません。
つまり「子どもが40度の熱を出したので行けません」と伝えても、それは無料解除の理由にはなりません。約款上は自己都合のキャンセルと同じ扱いです。
これは冷たいようですが、旅行会社側も宿やバスを押さえて費用を負担しているので、制度としてはそういう設計になっています。
宿泊のみの場合は「約款」ではなく「施設のルール」
宿だけ取った場合、標準旅行業約款は適用されません。施設ごとのキャンセルポリシーが全てです。
- 前日から発生する宿もあれば、7日前から発生する宿もある
- 同じ宿でもプランによって違う(早割プランほど厳しい傾向)
- 予約サイトによって表示場所が違う
なので予約確定画面のキャンセル規定は、必ずスクリーンショットを撮っておくことをおすすめします。あとから探すと見つけにくいことがあります。
そして、ここでよく悩むのが「キャンセル無料プラン」と通常プランの差額です。判断の目安としては、差額が旅行代金の3〜5%くらいまでなら、キャンセル無料プランのほうが心理的にも楽だと思います。それ以上開くなら、後述のキャンセル保険と比べる価値が出てきます。
航空券は「取消手数料」で、また別の世界
航空券は運送約款と運賃規則の世界です。
- 運賃種別で扱いがまったく違う。割引率が高い運賃ほど取消手数料も高いのが一般的です
- 出発前と出発後で扱いが変わる
- 「払い戻し手数料」と「取消手数料」が別々にかかることがある
金額は運賃や時期で変わるので、ここで具体的な数字を書くのは避けます。予約時の運賃名を控えておいて、その運賃規則を見るのが唯一の正解です。
パックツアーの感覚で「20日前までなら無料でしょ」と思っていると、航空券では通用しません。
損しないための3つの判断
1. 「20日前(日帰りは10日前)」のラインを意識する
行けるかどうか怪しいと感じたら、このラインより前に決断すれば無料です。逆に言うと、このラインを越えてから迷い続けるのが一番損をします。
2. 無連絡不参加だけは絶対に避ける
100%取られます。当日でも連絡すれば50%。この差は大きいです。
3. 旅行保険(傷害保険)ではキャンセル料は戻らない
大事なので繰り返します。国内旅行保険(旅行傷害保険)の基本補償に、旅行中止費用は含まれていません。
ケガの治療費や賠償責任はカバーされても、キャンセル料はカバー対象外です。「旅行保険に入っているから大丈夫」は成立しません。
では、キャンセル料に備える方法はあるのか
あります。ただし「キャンセル保険」というまったく別カテゴリの商品に入る必要があります。
保険料は旅行代金の3%前後から。10万円の旅行なら3,000円ほどで、前日キャンセルの4万円をカバーできる計算になります。
そして、これが一番大事なのですが——
風邪でも発熱でも、病名は問われません。主要商品はどれも病名を限定していません。
ただし、たった1つだけ絶対に外せない条件があります。
「通院の事実」があること。
Mysurance(損保ジャパン100%子会社)は、支払対象外をこう明記しています。
「自宅療養など、通院または入院の事実が無い場合」
「キャンセルした時点で通院の事実が発生していない場合」
つまり、熱が出た → 無理そうだ → 先に旅行会社へキャンセルの連絡をして、それから病院へ行った。これだと出ない可能性があります。順番が逆なんです。
さらにもう1つ。
「医師による診断が無く、検査キット等で自主的に行った検査が『陽性』であった場合」
家の検査キットで陽性が出ただけでは補償されません。医師の診断が要ります。
コロナ禍以降、自宅で検査して自宅療養、という流れが当たり前になりました。でもキャンセル保険の世界では、その行動が一番お金にならない選択になっています。
もっと詳しく知りたい方へ
キャンセル保険は商品によって条件の緩さがかなり違います。特に「いつの通院なら対象になるか」の窓の広さは、商品を選ぶうえで決定的な差になります。
主要4商品を条件の細部まで比較した記事を、noteで有料記事(300円)としてまとめました。
- 主要4商品の比較(そもそも対象になる旅行の種類が違います)
- 「通院の窓」の広さ比較。金曜に発熱して月曜出発、どちらの商品なら出るのか
- 入院・感染症・親族の看護の条件差
- 加入条件で多くの人が脱落する件。「予約から5日以内」と「14日以内」の壁
- 保険料は約3%と約4.5%。どちらが得かは旅行の種類で変わります
- 台風でキャンセルしたら出るのか
- 出ないケースの完全リスト
- どれを選ぶか、の判断フロー
旅行キャンセル保険は「子どもの風邪」で本当に出るのか|主要4商品を条件の細部まで比較した(note・300円)
無料部分だけでも、「通院の事実が要る」という一番大事な原則は読めるようにしてあります。
なお、キャンセル保険は予約した直後にしか入れません(商品によって予約から5日以内、または14日以内)。体調を崩してから慌てて入ることはできない設計になっているので、次に旅行を予約するときに思い出してもらえればと思います。
まとめ
- 国内パックツアーの取消料は20日前から(日帰りは10日前)。前日40%、当日50%、無連絡不参加100%
- 子どもの発熱は約款の無料解除事由に入っていない。自己都合と同じ扱い
- 宿泊のみは施設のキャンセルポリシー、航空券は運賃規則。3つは別ルール
- 旅行保険ではキャンセル料は戻らない。必要なのは「キャンセル保険」という別商品
- キャンセル保険は風邪でも出るが、通院の事実が必須。連絡より先に受診を
旅行の予約って、楽しい気持ちでするものなので、キャンセルのことなんて考えたくないんですよね。でも小さい子どもがいる家庭ほど、この確率は現実的に高い。予約の時点で5分だけ、この記事のことを思い出してもらえたら嬉しいです。
※取消料の水準は標準旅行業約款(国内・募集型企画旅行)にもとづく記載です。旅行会社によって認可を受けた独自約款がある場合や、航空券利用・貸切船舶を含む契約では異なることがあります。実際の契約条件は必ずご自身の予約時の約款・キャンセル規定でご確認ください。
※保険に関する記載は2026年8月時点の各社公式サイトにもとづく情報提供です。筆者は保険募集人ではなく、特定商品への加入を推奨するものではありません。
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